研修について
医学生・初期研修医の皆さんへ
超少子化の時代に小児科医になることを不安に思う方もいるかもしれません。たしかに、こどもは減っていますが、提供しなければならない医療は増え続けています。また、保護者目線では病気の重症度に関わらず小児科専門医による診療を受けたいという強い要請も高まる一方だと感じています。未来の日本を支えるのは、こどもに他なりません。安心してこどもを育てられない社会になったら、そのような社会は継続できないでしょう。私たち小児科医は、単なる医療提供者という立場だけでなく、こども達にとっての適切な代弁者となるべくプライドを持って医療に取り組んでいます。
わたしは決してまじめな学生ではありませんでした。進路についてもなかなか決め切れずにおりました。医学部6年生の最後の実習先が小児科の病棟でした。川崎病罹患後の、すでに元気を取り戻した10か月ほどの乳児との出会いで、私の運命が決まりました。振り返ると、直感的に、こどもは大切な存在であることを再認識し、こどもを守る医療の素晴らしさを感じ取ったのだと思います。
小児科医になってからの次の選択は、どの専門領域に進むかでした。最初は循環器、新生児、腎臓などに興味を持っていましたが、基礎医学との接点が大きく研究成果の応用が早い血液学を選ぶことにしました。実のところ、学生時代には血液学(特に顕微鏡の観察)はどちらかと言うと苦手でしたが、これも研修医1年目から数例の小児白血病の新規発症例の主治医となったことがきっかけで考えが変わりました。アメリカに留学した際には、当時はまだマイナーな存在だったキメラ抗原受容体の開発に携わり、その成果がCD19標的CAR-T細胞療法(チサゲンレクルユーセル)の実用化につながり、現在この治療は小児思春期若年成人の難治性・再発性の急性リンパ性白血病の重要な選択肢となっています。人生はどう転ぶかわからないものです。現在も、難治がんの新しい治療を開発したい、との思いで、この領域で基礎研究を継続しております。
教科書や講義だけではわからないことがたくさんありますので、外来や病棟での実習の機会を大切にしてほしいと思います。一人でも多くの方が私たちの仲間になってくださることを心から願っています。
教授 今井 千速
私たちのアピールポイント
1.子どもの総合医general physicianを養成します
成長発達過程にある小児の診療のため、小児科医には新生児期から思春期まで幅広い知識と様々な技能が求められます。また、プライマリーケアや乳幼児健診、小児保健・社会医学の理解も必要です。3年間の専門研修のうち、主に1年間は大学病院、2年間は連携施設で研修することで、各地域の実情に応じた医療を経験できます。連携施設は主に県内の基幹病院です。困ったときにはお互い助け合う、“顔の見える病診連携”が特徴です。
2.ライフイベントを尊重します
皆さんにはこれから結婚、出産、育児、介護など様々なライフイベントが訪れるでしょう。よい医療を提供するには、ご自身の生活が充実しなくてはいけません。様々なライフイベントを医局全体でサポートしつつ、小児科医としてのキャリアアップを応援します。
3.サブスペシャリティ研修、大学院、留学などキャリア形成を支援します
大学病院では、各専門チームが最先端の医療、研究を行っています。小児科専門医を取得後は、各サブスペシャリティの専門医取得を目指せます。また、大学院や国内外への留学も積極的に行い、自身のスキルアップや富山の小児医療のさらなる充実を図っています。地域中核病院でgeneralな小児科診療に磨きをかけることもできます。小児科医の数だけ道はある。皆さんが目指すキャリア形成を一緒に考えていきましょう!