研究グループの目的
小児がんとは
小児がんという言葉を聞いたことがあるでしょうか。こどもにも‘がん’(悪性腫瘍)が発生します。富山県全域(および新潟県糸魚川地域)の小児がんの診療は、富山大学小児科に集約化しています。小児がんの中で最も多い疾患は血液のがんです。白血病やリンパ腫などが代表疾患で、小児がんの4~5割を占めています。血液がんについで多いのは脳にできる腫瘍です。小児脳腫瘍の診療は、脳外科医と協力して、小児腫瘍医が抗がん剤治療などのトータルマネージメントを行います。
こどもに特有の病気である神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫などについては、小児腫瘍医を中心に、小児外科医や放射線腫瘍医と協力して治療にあたります(多くの専門家で治療にあたるので集学的治療と呼びます)。骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫などの骨・軟部腫瘍についても同様で、整形外科などの関係各科との密接な協力のもとに診療しています。
また、小児がんだけでなく、富山大学小児科では小児に発生する難治性血液疾患(再生不良性貧血や免疫性血小板減少症など)や生まれつきの免疫障害(原発性免疫不全症候群)の診療についても専門家が対応しています。
小児の造血細胞移植
白血病や難治性血液疾患、原発性免疫不全症候群では骨髄移植や臍帯血移植が必要になる患者さんがおられます。富山大学小児科では、家族ドナーからの移植だけでなく、骨髄バンクや臍帯血バンクからの移植にも対応しています。
また、神経芽腫などの一部の固形腫瘍では、自分の造血幹細胞(血液を作る元となる細胞のことです)を凍結保存したうえで強力な抗がん剤治療(超大量化学療法)を受けて頂く治療も行います。
多職種による治療中のサポート
小児がんを含め、こどもの慢性難治性疾患では医師、看護師以外の多くの職種のサポートが必要です。当科では病棟保育士が常勤しており、お子さんの遊びをサポートしています。
また、米国の小児疾患の療養支援の専門家資格であるチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)が勤務しており、こどもが自らの疾患や必要な処置や治療について、年齢なりの理解ができるように支援しています。
富山大学附属病院には小学生と中学生のための院内学級が設置されていますので、教室あるいは病室で勉強の支援を受けることができます。
高校生以上の場合は、臨機応変に支援を検討します。小児がんや難治性血液・免疫疾患で長期入院が必要な際には、このようなサポートが大変重要です。
日本小児がん研究グループの参加施設です
当科では、日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group:JCCG)に所属し、JCCGの行う臨床研究(多施設共同臨床試験)に参加しています。小児がんはどれも稀少疾患なので、施設毎にばらばらの治療を行ったとしたら、いつまでたっても進歩は得られません。
歴史を紐解くと、がんの診療において薬剤治療が有効かもしれないと初めて認識されたのは小児白血病が最初でした(於:米国、1948年)。そして、がんに対する抗がん剤の最適な組み合わせや投与量を調べる多施設共同臨床試験という仕組みは、1955年に始まったとされています。それ以来、この多施設共同臨床試験により小児がんの治療は発展し、治療成績も向上してきたのです。
現在でも、全国の小児専門施設の専門家たちが共同で治療法を新しく作り替えていくことが大切だと考えられています。当科では、臨床試験が行われている場合には積極的に参加をお勧めしています。
臨床試験と聞くと驚かれるかもしれませんが、希少疾患である小児がんにおいては、試験に登録するほうが全国の様々な専門家の診断支援などのメリットがあり、適切な診断と適切な治療を受けることにつながると考えています。
詳しくは担当医からの説明をよくお聞きになっていただきたいと思います。